テレ ワーク 導入促進
品質管理などの継続的改善手法のツールであるPDCAサイクル Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)に基づいてテレワークの推進体制の構築、実際の導入計画等のテレワーク導入のためのステップを説明します。
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テレ ワーク 推進体制の構築
テレワークの導入に向けて、メンバーを決めてテレワークの推進体制を構築します。
テレワーク推進体制としては、経営トップがリーダーシップを取ることが必須です。社内の 各部署が推進の意義を理解し、テレワークの導入が円滑に進むよう、経営トップ自らが、テ レワーク導入の意思を示すことが重要です、経営トップが理解を示さず、丸投げでは成功は望み薄です。
経営企画部門、人事・総務部門、情報システム部門等のテレワーク推進に関わる社内 制度や施策を担当する部門が中心となり、導入を検討している対象部門の代表者等も加 え、全社横断的なチームとすることが重要です。労働組合がある場合、労使での話し合いも 求められます。
これらのチームのメンバは、経営トップと一体となって進めていきます。
テレ ワーク 導入
働き方改革に合わせた柔軟な働き方を実現するテレワーク。
導入時のポイントと具体的な導入手順8つステップを解説。
テレワーク 導入時のポイント
下記はテレワーク導入に必要なポイントをまとめた図です。
第1のポイントは、社員は本拠地から離れたところで仕事をしますから、労務管理をどうするかということです。第2のポイントは、テレワーク時の作業環境をどうするかということです。第3のポイントは、テレワーク時の情報通信システムをどうするかということです。
テレワーク 労務管理
まず、労務管理についてです。
テレワーク時も本社と同じように時間管理をするのか、あるいは事業場外みなし労働制度を導入して、在宅勤務やモバイルワークのときは所定労働時間働いたとみなすのかということが課題になります。日本での在宅勤務は、ほとんど週に1、2日であるため、通常の時間管理を適用する事例が多いようです。
また、部下がさぼっているのではないかと気にする上司も、いますが、勤務開始時にその日の実施項目を上司に連絡し、終了後にその日何をしたかを連絡することによって、上司もその日の業務量と進行状況を把握することができます。
また、評価をどのようにすればよいかということも課題になります。会社全体として、成果に応じた評価制度に変える工夫も必要かもしれません。ただし、テレワークの頻度が週に1、2日であれ
ば、外出や出張でいない場合と変わりませんので、評価制度を大きく変える必要はないでしょう。
労務管理に関してもテレワーク勤務規程を作成して、在宅勤務やモバイル勤務のときのルールを明確化することが必要です。テレワーク勤務規程を作成するに当たっては、厚生労働省が設置しているテレワークの相談窓口「テレワーク相談センター」に相談してみてください。
仕事環境
次に、仕事環境です。
在宅勤務時の執務環境に関しては、厚生労勁省の「VDT作業のガイドライン」を参考にするとよいでしょう、長時間座って仕事をする場合、和室のこたつやリビングの低い
椅子では腰を痛める可能性があります。できれば、オフィス仕様の椅子や机を用意することが望まれます。
モバイル勤務の場合、サテライトオフィスとして活用するのも方法の一つです。最近では、カラオケ店と提携して昼間の空いている時間帯にカラオケボックスをオフィスとして利用することを許容する会社もあります。
また、テレワーク導入に当たって、本社のオフィスをフリーアドレス化することによってオフィススペースを節約し、コスト削減を図る企業もあります。
フリーアドレスとは、社員が個々の自席を持たず自由に働く席を選択できるオフィススタイルです。従来のオフィスですと、決められた位置にデスクを配置し、一人一台デスクが与えられ、その与えられたデスクで働いていました。要はその「自席」という概念をなくし、空いている席や自由な場所で働くことができるのです。それがフリー(=自由な)アドレス(=所在)です。
カラオケ店 オフィスボックスでは積極的にテレワークを導入しており、ネット環境も良好で大きな液晶モニターも使用できる。
情報通信技術 ICT
3つ目に、情報通信システムです。
テレワーク導入を躊躇する理由のトップが「セキュリティが心配」という調査結果があります。
確かに社外で仕事をするわけですから、そこから情報が大量に漏洩することが懸念されます。
しかし、現在は「リモードデスクトップ」といって、手元のパソコンから会社で普段使っているパソコンを操作し、操作結果は会社のパソコンに保存されるというシステムがあります。
大量のデータをダウンロードできないようにする設定も可能ですので、セキュリティ面は安心です。利用料もゲ1クライアント当たり月額千円台のシステムもあり、中小企業でも導入しやくなっています。
また、会社やデータセンターのサーバーにデスクトップがある仮想デスクトップ(VDI)という方式もあります。この場合、手元のパソコンは記憶媒体のないシンクライアントパソコンを利用しますので、データ漏洩の心配はありません。
クラウトサービスを利用する方法もよいでしょう。メールやスケジューラー、チャット、プレゼンス管理、Web会議、グラウト上のストレージなどがワンパッケージになっているサービスもありま
す。利用料が1クライアント千円程度のサービスもあります。いずれにしても、セキュリティを確保して、安全に社外で仕事できる環境づくりが必要です。
テレ ワーク 導入手順
実際の導入プロセス手順は下記のとおり。
導入目的の明確化
テレワーク導入の目的です。テレワークを導入することでどのようなメリットを得たいかという視点に立って、導入目的を定めます、目的は1つに限りません。
対象範囲の決定
テレワークを導入するにあたっては、まずは、①「対象者」②「対象業務」③「実施頻度」について決める必要があります。
はじめから大幅な改革、変更を伴う導入ではなく、社内の現行制度やルールを維持したまま、できるところからトライアル(試行導入)を行い、少しずつ対象範囲を広げていくがベターです、テレワークによる改善効果が大きい対象を優先的にパワーを注いで改善効果を確認し徐々に対象範囲を広げてください。
但し、すべて業務をテレワークできる訳がない、ムリ、ムダ、ムラは禁物、テレワークできない業務が今後、他社との差別化のポイントになる。
テレワーク可能な業務は拙速に導入し、改善された時間、パワー、人はテレワークできない業務にシフトし、未来のテレワーク社会に対応してください。
対象者の選定
対象部署・対象者の選定については、試行的に導入する部署を選定し、効果検証を行った上で、徐々に対象部門、対象者数を拡大していきます。
できるだけ趣旨の理解度が高く、関心の高い部門長の配下のメンバに参加してもらうことが成功の秘訣です。
ポイントは職種単位ではなく、ふだんの仕事のなかで、テレワークでもできる業務はなにか、業務単位で選定を行っていくことです。
又、当然ですがメリットを受ける従業員を優先的に選定 する、たとえば、育児・介護期にある従業員、高齢の従業員、怪我や天災等で通勤困難な 従業員、子供の発熱時等のライフステージや個人の状況によって、メリットを享受しやす い従業員を選定していくことです。
対象業務のリスト化
ICTを活用し、幅広い業務を行うことが可能です。たとえば、下記のような業務があります。業務全体を見渡し、リスト化し、テレワークで行うことができる業務とできない業務の整理、見直しを実施します。
1. 資料の作成・修正及び管理(企画書、報告書、議事録等)
2. 上司や同僚、顧客先や取引先等との連絡・調整(電話、メール等)
3. 社内手続き
4. 承認等の意思決定
5. 電話、会議支援システム等を用いた社内会議(進捗会議、意見交換等)
6. 電話、会議支援システム等を用いた社外関係者(取引先等)との会議
7. 部下・後輩等への指導(メール、チャット、TV電話)
8. インターネット等からの情報収集(情報検索、調査等)
9. 業務知識等の学習(e-learning、資料閲読等)
テレワーク 実施頻度
テレワーク(特に在宅勤務)の実施頻度は、導入段階や導入目的、企業の方針に 合わせて設定します。
テレワーク導入の初期段階では、既存の働き方を基本としつつ、テレワークに慣れるた め、たとえば週1日程度等、実施頻度を少なめに設定する。 週1、2日程度であれば、社内の制度やルール等を大幅に変更する必要がなく、また、 上司・同僚とのコミュニケーション上の課題を感じることも少なく、テレワークを取り入れるこ とができます。
実施後はヒヤリングを実施して課題を見つけて、解決し、テレワークの実施日数を段階的に増やし いきます。
現状把握
テレワークの試行・実施にあたっては、以下の項目に関する現状把握と、テレワーク 実現に向けた課題の洗い出しを行います。
現状把握を数値で把握すると理想との差が容易に差が分かります、逆に如何に立派なゴール(目標)を立てても現業把握が疎かだと問題点が見えず効果がでません。
①就業規則(始業・終業、給与や手当等)
現状確認を行い、変更点がある場合は、規程の修正等を行う。
②労働時間制度
各実施者の労働時間制度を把握する。
③人事評価制度&勤怠管理・業務管理の方法
人事評価制度の確認を行い、各自の労働時間制度やマネジメント方法に対 応した勤怠管理・業務管理を行う。
④申請・承認方法
申請書のテンプレートを作成しメールでの送付・承認を行ったり、スケジュール 管理ツールの活用等により申請・承認を行う、例えば電子印鑑を導入、捺印を廃止する。
⑤セキュリティルール
情報・ファイルの取り扱い、資料、紙・データの持ち出しの可否と方法等を決定 する。
⑥現行ICT環境の確認
現在利用しているICT環境を確認し、規模に合わせて運用しやすい導入方法を検討する。職場から離れているテレワーク実施者と職場が円滑に業務を進 めるために勤怠管理、業務管理ツールやWeb 会議システム等のコミュニケーシ ョンツールを導入し、環境を整備する。
テレワーク 目標設定
目標設定では、①どこまで改善するか目標値を決める②いつまでに行うか期限を決める、の2つを明確にします。
下記は具体的な目標内容です、目標を決める際に参考にしてください。
項目 | 目標内容 |
生産性の向上 | 売上・利益の向上 |
1人当たり時間生産性の向上(粗利÷社員数) | |
1人当たりの残業時間の削減 | |
1人当たりの総労働時間の削減 | |
顧客訪問件数・顧客面談時間の増加 | |
移動時間の削減(公共交通機関/車) | |
コスト削減 | 旅費・交通費の削減 |
オフィス賃料の削減 | |
オフィス光熱費の削減 | |
コピー・印刷費の削減 | |
ペーパーレス化の比率 | |
採用・人材定着 | 離職率の低下(育児・介護理由、その他の理由) |
入社希望者の増加(新卒/中途採用) | |
ワークライフバランス | 仕事と生活のバランス(アンケート) |
年次有給休暇取得率 | |
社員満足度の向上(アンケート) |
テレワーク導入計画づくり
テレワークの導入計画の策定に際しては、以下の項目について、実施スケジュールに 盛り込みます。
- プロジェクト計画書作成
- 制度・ルールの確認
- テレワーク環境構築
- テレワーク実施者及びその上司・同僚への研修・セミナーの開催
- テレワーク検証
- 実証事業終了後の継続計画の策定・報告
スケジュール管理でもっともよく使われているのがガントチャートです。ガントチャートはガントが考案したツールで、活動計画やプロジェクト管理などに使われる帯状の図表のことです。バーチャートとも呼ばれます。
そして計画づくりで重要なのが『誰が、いつ、何をするか検討する』です、この内容をガントチャートに全員、了解の元で記載し、共有化します。
テレワーク整備 実施
計画に従って、テレワーク実施時のルールの整備や仕事環境、ICT環境の整備を行います。
具体 的な整備内容については別途、解説します。
テレワーク 研修等説明会の開催
テレワーク実施者やその上司・同僚に対して、研修等の説明会を開催し、導入教育 を行います。
盛り込む内容は
①テレワークの目的・必要性を理解する
②テレワーク時の体制につ いて理解する
③テレワーク時のツールを操作できるようにする、等です。
研修等説明会後には内容が理解しているか基本なテストを行い事を忘れないでください。
又、研修等説明会が分かり易かったか? アンケート調査も実施してください。
その際は可能な限り、教育、テスト、アンケートのすべてをオンラン、リモートワークで実施してください。
テレワーク キックオフ
トップが自らテレワークを使用して全社員にワーク導入の意義と目的を説明するキックオフを行い、開始を宣言します、けじめが大切です。
テレワークの試行・実施の開始 テレワークの試行期間は、たとえば6ヶ月間等、少なくとも3ヶ月以上を設定し、検証 を行うことが望ましいです。最初は思うように操作できなかったり、突発的なイベントや繁 忙期に重なって、予定通り実施できないことがあるためです。
テレワーク推進のための評価と改善
導入目的と照らし合わせた評価を行い、効果と課題を明らかにします。
具体的には中間報告会、最終報告会の日時を事前に設定し、テレワークを使用して報告会を開催します。
週1日以上等、推奨する実施頻度を事前に共有し、うまくいかなかった場合はその理 由・背景についても把握します。 調査方法は、アンケート調査、ヒアリング・グループインタビュー等が考えられ、量的調 査、質的調査の両面で行います。
評価については、定量的に把握することにより、業務 の実態を数値化し、分析を加えることができます。適正な評価ができれば、テレワーク導 入の可否の判断や、普及拡大策の検討に役立てることができます。 試行導入の段階だけでなく、本格導入後も、継続的に評価を行い、従業員の声を 聞きながら見直しを行うことが求められます。
テレワーク導入関連Webサイト
政府および民間のテレワーク導入関連のWebサイトを調査しました。
中小企業の方にも即時、導入できるフリーのサービスもあります。
情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書
総務省が提供する、テレワークを導入するための初心者向け手順書(PDF)。テレワークの基礎知識やPDCAサークルを用いた導入プロセス、ルール作りなど実務的な知識や具体的な手法がわかりやすく解説されている。
東京テレワークアプリ
Androidスマホ/タブレットに対応した、テレワーク推進を支援する東京都公式アプリ。テレワークの導入・実践に必要な情報を入手できるほか、セミナー等の申込みや求人相談や実践事例の検索が可能。機能がテレワーク推進者とワーカーのふたつに分かれている。
テレワークお役立ち情報総まとめ
日本テレワーク協会客員研究員の今泉千明氏による、テレワークに関する各種お役立ち情報をまとめたPDF。テレワーク導入初心者にとっても有用な情報、GOOD!
参考文献:
テレワーク導入・運用の教科書
テレワークで働き方が変わる! テレワーク白書2016
できるテレワーク入門 在宅勤務の基本が身に付く本
コメント
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