ウェアラブルデバイス 基礎知識
ウェアラブルデバイスは体に着けるタイプのデバイスです。そのため、デバイスを単体で使うよりもより人に身近なサービスを実現するとが可能なデバイスです。一歩先を行くlOTサービスを実現するためウェアラブルデバイスの活用にトライし、品質、生産性改善を図る。
ウェアラブルデバイスとは?
IoTを構成するデバイスの1つとしてスマートグラスをはじめとするウェアラブルデバイスがあります。ウェアラブルデバイスは装着したスタッフとその周辺の状況をloTの一部として扱うことができます。ウェアラブルデバイスを用いたlOTサービスでは、ウェアラブルデバイスの取得した情報を分析し、その結果を再度ウェアラブルデバイスに返します。つまり、装着者の状態をウェアラブルデバイスでセンシングし、さまざまな形で装着者にフィードバックします。次の図のようにウェアラブルデバイスもスマートフォンと同様にloTのデバイスの1つであり「センシング(検知)」と「フィードバック(制御)」が行なえるツールです。
英語:Wearable device
スマートデバイスからウェアラブルデバイス
ウェアラブルデバイスはスマートフォンやタブレットなど、スマートデバイスと呼ばれるモバイルコンピュータの次世代として期待されており、単にスマートデバイスの機能を限定して身に着けられるようにした商品でなくlOTとマッチングする為に開発され違うタイプのデバイスです。ウェアラブルデバイスが「身に着けるタイプのデバイス」なので意識しなくても自動的に外部の情報を検知し、記憶し、保存する事が可能です。装着した作業者の周囲の「現状(コンテキスト)を把握し、適切に情報提示、注意喚起といったフィードバックを返してくれるデバイスがウェアラブルデバイスです。また、過去から現在までのさまざまなコンテキストを記録、保存できるので活用すれば作業者の作業能力、感覚を拡張するデバイスとなります。
ウェアラブルデバイス市場
ウェアラブルの市場規模と成長性についてみてみると、「デバイス」と「サービス(デバイス上の付加価値)」で分けると、前者の売上高が大きな割合を占めていることが分かる。種別でみると、2014年時点では医療・ヘルスケア系デバイスが約半分程度を占めているが、今後は産業用用途が大きく成長することが予想される。
構成部品の小型化、省電力化
スマートデバイスに代表される高度な組み込みの機器の普及によりデバイスを構成する部品の小型化や省電力化が進んできました。半導体製造プロセスの微細化による部品の小型化を半導体メーカーが進める一方で、少ないバッテリでも長時間駆動できるように電力消費を考慮した設計が行なわれてきました。そのため、全体的にウェアラブルデバイスの動作時間が延び、実用レベルに達しています。
また、部品の小型化は動作時間の延長だけではなく、体に装着しても違和感のないサイズに多くの部品をまとめることができるようになりました。又、コスト的にも価格が低下して、工場等での活用する場合、経済的なメリットが多く、徐々に活用されていきています。但し、ウェアラブルデバイスは小さく、又着用する商品なので衝撃(ショック)が加わり易く、如何に価格を維持して品質、信頼性を確保できるかが今後の課題となる。
Youtube動画:ウェアラブルデバイス参考事例NailO
色々なウェアラブルデバイスのアイデアが米国、中国等の海外で開発されている。
但し、品質(コスト含む)、信頼性が高い商品は少ない。
NUI:Natural User Interface
ウェアラブルデバイスは、デバイスを操作するためのキーボードやマウスといったユーザインタフェースを持たないことが多いです。そのため、ウェアラブルデバイスの操作を実現させるためには、既存とは違ったユーザインタフェースが必要です。そのため、音声認識技術により声で操作する技術、体の一部を動かして操作を行なうジェスチャーコントロールなどのNUI (Natural User Interface)が発展してきました。これらの技術がウェアラブルデバイスのような小さな機器でも動作するレベルまで進化してきたことにより、ウェアラブルデバイスの操作が実用的なものになってきています。
スマートデバイスとの連携
多くのウェアラブルデバイスは、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスと連携ができるようになっています。スマートデバイスの機能を利用することにより、ウェアラブルデバイスはセンシングと結果の表示のみを行なうことができます。スマートデバイスと連携することで、ウェアラブルデバイスは利用用途が格段に広がります。ウェアラブルデバイスとスマートデバイスとの連携する為の『デバイスWebAPI』等のWeb通信技術が開発さてれおり、アプリのコードに入れれば簡単に通信が可能です。
*デバイスWebAPIとは
各種の外部デバイスをスマートフォンのネイティブアプリ、Webアプリ、ハイブリッドアプリのどれからでも連携できるようにする、Web技術を利用した統一インタフェースのこと。
アクティビティドラッカー市場の形成
デバイスを取り巻く環境的側面では、ウェアラブルデバイスの中でも装着者の活動量などを計測するアクティビティドラッカー(別名:フィットネストラッカー)の市場が形成されてきたことが挙げられます。アクティビティドラッカーは、歩数や運動時間などの活動量や睡眠時間を計測できるウェアラブルデバイスなので多くの健康保険組合では従業員に対してウェアラブルデバイスを支給し健康管理の促進を図ることで、病気を未然に防ぎ医療費の抑制につなげる動きが見られます。又、アクティビティドラッカーを活用することでテレワークで業務をしていてもスタッフの生産性を歩数等で数値化して適正に評価することもできます。
英語:activity tracker
ウェアラブルデバイスの種類
ウェアブルデバイスには、さまざまな種類があります。
どのような種類があるのか、それぞれどんな特徴があるのかを理解して、必要するIoTサービスに合ったウェアラブルデバイスの選びましょう。
ウェアラブルデバイスの分類表
【機能別分類表】
入力に関しては主に3つの機能(カメラ、音声認識、ジェスチャーコントロール)があり、また、撮影した結果を用いて画像認識などをさせることもできます。たとえば、カメラでとらえた人の顔やQRコードなどを認識させて、次の処理のトリガーとすることもできます。
【センサー別分類】
ウェアラブルデバイスが備える特徴的なセンサー
ウェアラブルデバイスの着用場所分類
ウェアラブルデバイスは、体の特定の場所に身に着けることで、装着者の身体や周辺の環境のデータがセンシングできます。
①頭/顔
頭や顔に身に着けるものとして、頭部に着けるタイプのヘッドバンドや被るタイプのデバイス、眼前に着けるタイプのメガネ型デバイスやヘッドマウントディスプレイなど、これらは脳波や心拍を測定するデバイスや、ディスプレイに情報表示を行なうデバイスです。
②腕
腕に身に着けるものとして、時計型のスマートウォッチやリストバンドタイプのデバイスがあります。こちらは人の歩数や睡眠といった活動量、脈拍を計測できるものが多いです。また、上腕に装着するアームバンドタイプのデバイスも存在します。
③全身
全身に身に着けるものとして、衣服型のデバイスもあります。これは衣服を構成する繊維に伝導性の化学物質を染み込ませ、心電を図るセンサとして利用するタイプのデバイスです。センサだけではデータの取得しかできないため、別途データを外部に送信する送信機を外付けします。
④足
足に着けるものとして、靴の底に敷く中敷き(インソール)タイプのものや靴そのものがセンサとなっているものもあります。また、靴に装着するタイプのデバイスも登場してきています。
⑤その他
その他のものとして、指に着けるタイプのリング型のウェアラブルデバイスもあります。装着した手や指の動きをセンシングし、他のデバイスをコントロールする用途に使われます。
ウェアラブルデバイスのデバイスの形状別分類
ウェアラブルデバイスの形状は、大きく3つに大別できます。
・ヘッドマウントディスプレイ型(以降、HMD型) ・ウォッチ型 ・アクセサリ型
①HMD型
HMD型は眼前に装着して利用するタイプのウェアラブルデバイスです。メガネのような形をした「グラス型」と、完全にデバイスで眼前をふさぐ『ゴーグル型』に大別できます。グラス型は、主に装着したまま作業をする場合や、歩き回ることを想定して設計されています。一方で、ゴーグル型は完全に装着者の視界をふさいでしまうため、エンターテイメントやゲームでの利用が想定されています。
②ウォッチ型
ウォッチ型は、中サイズ(2~3インチ程度)のディスプレイを備え、腕に装着して利用するタイプのウェアラブルデバイスです。
腕時計と同様の形をしており、ディスプレイも周囲が丸いものや四角いものがあります。
多くのウォッチ型製品には、腕時計と同様に竜頭や側面ボタンが付いており、これを押すことでディスプレイのオン/オフや表示の変更が可能となっています。
③アクセサリ型
アクセサリ型は、その用途に応じてさまざまなタイプのものが登場してきていますが、現状の主流はリストバンド型のものです。
リストバンド型のデバイスは、ウォッチ型と同様に腕に巻いて利用するタイプのウェアラブルデバイスですが、中サイズのディスプレイは備えていません。ただし、装着者になんらかの通知や表示をするために、ごくシンプルなLEDディスプレイやLEDライト、バイブレータなどを備えているものが多いです。
インターネットへの接続形態別分類
ウェアラブルデバイスは、デバイス単体で利用できる製品もありますがその多く
はネットワークに接続してデータを送受信します。データの送受信先は、装着者が携帯ているスマートデバイスやPCまたはIoTサービスを実現するグラウトサービスやWebサービスです。
このようなネットワーク上のサービスに対してウェアラブルデバイスを接続するためにはインターネットを介して通信させる必要があります。
ウェアラブルデバイスをインターネットに接続させる場合には、大きく3種類の接続形態があります。
①SIMカード(3G/LTE通信)
②Wi-Fiモジュール
③テザリング
①SIMカード(3 G/LTE通信)
ウェアラブルデバイスに携帯電話網に接続するためのSIMカードを挿入して、3G/LTEで通信する接続形態です。この接続形態だと、ウェアラブルデバイス単体でインターネットに接続でき、携帯電話網の電波が届く範囲ではどこでも通信できます。
ただし、携帯電話網を利用した通信は通信モジュールによる電力消費が大きく、バッテリの容量が限定的なウェアラブルデバイスにはあまり適していません。
②Wi-Fi モジュール
ウェアラブルデバイスが備えるWi-Fiモジュールを利用して無線LANアクセスポイントに接続し、インターネットに接続する接続形態です。
大容量のデータ通信を行なう場合には高速に通信できますが、この接続形態も3G/LTE通信と同様に通信に対する電力消費が大きくなってしまいます。
テザリング
ウェアラブルデバイスからスマートデバイスを経由してインターネットに接続する接続形態です。この接続形態は一般的にテザリングと呼ばれます。
ウェアラブルデバイスとスマートフォンとの通信は、Wi-FiもしくはBluetoothを利用するのが一般的です。Bluetoothの中でも特に省電力で効率的に通信できるBluetooth Low Energy (以下、BLE)が主流となっています。ウェアラブルデバイスとスマートデバイスとの間をBLEで省電力に接続し、その先はスマートデバイスを介して3G、4G通信でインターネヅトに接続します。
ウェアラブルデバイスの選び方
ウェアラブルデバイスのメインの商品であるグラス型、ウォッチ型、アクセサリー型の特徴、及びそれらの購入の際のポイントである下記の内容を説明。
・情報の表示
・デバイスコントロール
・センシング
グラス型 ウェアラブルデバイス
グラス型のウェアラブルデバイスではデバイスにAndroidなどのOSを搭載して動作します。主にスマートグラスと呼ばれおり、眼前に装着してディスプレイを見ながら操作をするものが一般的です。スマートグラス製品のスペックは、およそ2世代前のスマートフォン程度。
スマートグラス 特徴
スマートグラスは製作/発売するメーカーによって製品固有の特徴がありますが、おおむね全体的に共通する特徴がいくつかあります。
①パーソナルディスプレイ
スマートグラスの多くは、装着者の眼前にディスプレイを備えています。このディプレイは装着者にしか見ることはできないものです。両手が空いた状態 ハンズフリーで即座にディスプレイの表示内容を確認できます。
また、目線と同一方向にディスプレイがあるため、装着者が目線の移動を最小限に表示内容を確認でき、透過型(シースルー型)/非透過型、両眼/片眼のものがあります。
透過型のディスプレイでは、ディスプレイに表示されている内容の奥に風景が透けて見えています。逆に非透過型では、ディスプレイと目の延長線上の物体は見えませんが、表示内容の視認性は高まります。
また、ディスプレイは片眼のみでディスプレイを見る単眼タイプと、左右の目でディスプレイを見る両眼タイプがあります。
単眼タイプは、装着者の視界をふさぐ領域が少ない半面、実際に見えるディスプレイの広さに関係する視野角を広くとることができません。一方で両眼タイプは、装着者の視界をふさぐ領域は広いですが、広い視野角を確保できます。また、両眼タイプは左右のディスプレイを使うことにより、3D表示することも可能です。
②ハンズフリー操作
スマートグラスには、ボタンやタッチパネルが付いていてそれで操作するものや、音声やジェスチャーで操作するものがあります。たとえば、音声でカメラを起動して写真を撮ることができ、装着者の瞳の瞬きを検知してカメラのシャッターにするものがあります。また、スマートグラスには各種センサ類も搭載されているため、加速度センサを使った操作なども可能です。
音声やジェスチャーコントロールについては、各デバイスで搭載されているものと、されていないものがあります。また、それらハンズフリーの操作をアプリケーションの一部として独自に作り込むこともできます。
③目線方向のカメラ
スマートグラスにはディスプレイの近くに目線方向を向いたカメラが備わっています。このカメラを利用することで装着者と同じ目線で写真を撮ったり、動画を撮影したりできます。また、この目線方向のカメラを使うことで装着者が見ているものを遠隔にいる人と共有することも可能になってきます。
④AndroidベースのOS
世に出ているスマートグラスの多くは、Google社が提供するスマートデバイス向けのモバイルプラットフォームであるAndroid OSを搭載しています。
タッチパネルがないことやディプレイのサイズ/解像度を考慮する必要はありますが、今までAndroidで積み重ねてきた資産を利用できます。デバイスによっては、スマートフォンで利用していたAndroid OS用のアプリケーションをそのまま利用することもできます。
スマートグラス用途
スマートグラスには多くの機能が搭載されているため、幅広い用途に利用可能です。スマートグラスならではの用途も含めていくつか見てみましょう。
①通知のリアルタイム確認
スマートフォンや連携するサービスから届いた通知を眼前のディスプレイで即座に確認できます。これまでのスマートデバイスでは、なんらかの通知が来た場合にポケットやカバンから取り出して、ディスプレイをオンにしてから通知内容を確認する必要がありました。しかし、スマートグラスの場合は、通知が来たら眼前のディプレイを見るだけで即座に通知を確認できます。そのため、なにか作業を行なっていて両手がふさがっている状態でも確認ができます。
②スマートデバイスの子機
スマートデバイスと連携できるウェアラブルデバイスは、スマートデバイスの子機としても利用可能です。たとえば、スマートデバイスにかかってきた電話をスマートグラスで受信してハンズフリーで応答することもできます。
③AR(Augmented Reality:拡張現実)
現実世界の物体にディスプレイ上で情報を重ね合わせるAR技術は、スマートグラスでも利用可能です。たとえば、スマートグラスをかけてなにか物体を見た場合に、スマートグラスが物体(もしくは物体に備え付けられたマーカなど)を認識し、スマートグラスのディスプレイに関連する情報を重ね合わせて表示させるといったことが実現できます。
情報の重ね合わせ方には2種類あり、スマートグラスの全面のカメラで撮影している映像に重ね合わせるビデオシースルーを利用した方式と、シースルーディスプレイ(透過型ディスプレイ)を利用して現実世界の物体に情報を重ね合わせる方式が存在します。
④目線動画、画像の共有
スマートグラスは、デバイスの前面に装備される目線方向のカメラを用いて作業者の目線で写真や動画を撮影できます。
作業者の一人称目線で画像や映像を撮影して、ネットワークを介してリアルタイムにlOTサービスなどに共有することで、作業者が行なった作業や、そのときの状況の記録がドライブレコーダーのように長時間、保存が可能となり、事故発生時の履歴が容易に再現可能です。
ウォッチ型 ウェアラブルデバイス
ウォッチ型は、腕に巻きつけて利用する腕時計型のウェアラブルデバイスで、主にスマートウォッチと呼ばれています。腕時計と同じように時計の盤面を持ち、この盤面に色々な情報を表示できます。
盤面すべてに表示可能なフルディスプレイのタイプと、普通の腕時計の盤面の一部がディスプレイになっているタイプがあります。
又、スポーツや健康管理に重点を置くスマートウォッチの場合は、加速度センサを使った歩数計が搭載されています。心拍数を測るセンサを盤面の裏側に備えているものもあります。
スマートウォッチ 特徴
スマートウォッチもメーカーごとに製品固有の特徴がありますが、全体的な共通の特徴は下記のようになっています。
①省電力かつ長時間利用
アクセサリ型のデバイスの多くは、数種類のセンサを備えていますが、計測したデータを確認するための高性能なディスプレイは付いていません。ディスプレイが付いていたとしても数字などを簡易に確認する程度のものなので、非常に省電力かつ長時間の利用が可能です。日常的に身に着けるデバイスが多いため、長時間稼働できる事が必要です。
②ジェスチャ認識
指輪型やアームバンド型のウェアラブルデバイスでは、内臓するセンサを利用して指の動きや手の動作を認識できるものがあります。たとえば、指輪側のデバイスでは、内臓の加速度センサなどを用いて、指で空中に描いた文字などを認識できます。
アームバンド型では、上腕の筋電位を測定することにより、装着者の手がどのような形や動作をしているかを認識できます。
ただし、ジェスチャー認識については、その認識精度が環境や利用する人に影響されるといった課題があります。
③特徴的なセンサを搭載
アクセサリ型のデバイスでは、身に着ける場所や用途に関連して特徴的なセンサを搭載しているデバイスもあります。
たとえば、ヘッドバンド型のデバイスでは、脳波を測定するセンサが搭載されています。また、先ほどのジェスチャー認識でも筋電位を測るデバイスがありましたが、こちらも筋電位を測る特殊なセンサが腕輪型のデバイスの内側に搭載されています。
さらに、ものによっては装着者の心電図や心電波形を計測するセンサを搭載するデバイスもあります。
スマートウォッチ 用途
アクセサリ型のデバイスの用途も、各メーカーや形状によって大きく異なります。
形状別に用途を見ていくと共通項がつかみにくいので、ここでは利用されるセンサに着目して代表的な用途と一部特殊な用途を見ていきます。
①コントローラ
デバイスに内蔵される加速度センサや筋電位センサを利用して、装着者のジェスチャーを認識します。認識されたジェスチャーの結果をデバイス、もしくは連携する外部デバイスのコントロールに利用できます。
たとえば、デバイスを装着した腕で特定の動きをさせることによって、連携するスマートデバイスの音楽を再生することなどができます。
②健康/フィットネスサポート
スマートウォッチと同様に、アクセサリ型のデバイスも、豊富に搭載されるセンサを利用して、健康管理やフィットネスやトレーニングのサポートに使用されます。スマートウォッチでは搭載できない/されていないセンサを搭載するものもあり、より本格的に健康やフィットネスに利用される際に用いられます。
③特殊なセンサを利用した各種用途
汎用的なセンサではなく、特殊なデータを計測するためのセンサを利用した場合には、そのセンサの特徴を考慮した特殊な用途があります。
たとえば、衝撃センサを搭載したヘルメット用の特殊なデバイスでは作業者が転倒した際の衝撃を検知して遠隔にいる管理者などに通知するということもできます。
心拍を計測できるセンサを搭載したデバイスでは、計測された心拍のリズムやパターンを分析し、トラックなどのドライバーの居眠り防止への利用が検討されています。
脳波を測るセンサでは、装着者の脳波を分析して緊張度合いやリラックス具合、集中度などを可視化できます。この可視化データを利用して、効率の良い作業環境、作業時の状態把握などへの応用が検討されています。
さらに医療系への応用として、血流をカメラで撮影して摂取カロリーを測定するものも検討されています。
このように、アクセサリ型では、スマートグラスやスマートウォッチと違い、形状や装着場所、搭載されるセンサが多岐にわたるため、さまざまな特殊な用途が想定されています。
選び方 ポイント① 情報表示機能
ウェアラブルデバイスを用いてディスプレイに情報を表示させる場合ののポイントです。
グラス型もしくはウォッチ型
ディスプレイに情報を表示できるデバイスはグラス型デバイスかウォッチ型デバイスになります。
情報をハンズフリーで閲覧する必要がある場合はグラス型デバイスを選択する必要があります。ウォッチ型デバイスでは、通知に気付くことはできたとしてもその内容をディスプレイで確認するには腕を動かす動作が必要となります。
ディスプレイのグラフィック
ウェアラブルデバイスのディスプレイにはモノクロ表示とカラー表示があります、モノクロ表示は情報が単色(1色)で表現される代わりにディスプレイにおける電力消費が少なく、バッテリーが長時間、使用できます。
カラー表示は画像や動画をカラーで表現できるため、バラエティに富んだコンテンツを表示できますが消費電力は単色に劣ります。
ディスプレイの位置
ウォッチ型デバイスでは、ディスプレイは手首の甲側に表示されるため、表示内容を確認する場合には手首を返して視線を腕に落とす必要があります。
一方、グラス型デバイスでは、ディスプレイは眼前にあるため、視線をほとんど外すことなく表示内容を確認可能です。ただし、実際に見える表示内容は、現実世界とは焦点距離が合わずに両方を同時に見ることは難しいです。
又、片眼タイプのグラス型デバイスではディスプレイの位置が眼前の正面か上下に位置されるものがあり、普段の視界をどれくらい邪魔しないほうが良いかを検討します。
両眼もしくは片眼
グラス型デバイスには、左右の眼それぞれにディスプレイを用意している両眼タイプのものと、左右どちらかの目にディスプレイを用意する片眼タイプのものがあります。
大きな画面で動画を見たりする場合には両眼タイプが適していますが、装着者の意識のほとんどがディスプレイに向くため、他のことをしながら利用する用途には向きません。
一方、片眼では大きなディスプレイは期待できませんが、装着者の視界を大きくふさがないため、他のことをしながら情報を確認する用途に適しています。
透過型もしくは非透過型
グラス型デバイスは、ディスプレイの奥の現実世界が透けて見える透過型(シースルー)と、一般的なディスプレイと同様に背景が透けない非透過型があります。利用する環境に応じて使い分ける必要があります。
透過型ディスプレイの場合、ディスプレイに表示された情報の奥が透けて見えるため、周囲の状況をかろうじて把握できますが、明るい場所(たとえば日光下など)では背景の光が強くディスプレイに視認性が低下します。
一方、非透過型ディスプレイの場合は、ディスプレイの奥が透けていないため、ディスプレイの奥になにがあるのか確認できません。しかし、視認性は外部の環境に依存されにくくなります。
視野角
グラス型デバイスのディスプレイでは、視野角が見えるディスプレイサイズに大きく影響します。視野角が小さければ、解像度が高いディスプレイを搭載したとしても、実際に見えるサイズが小さく、解像度の恩恵を受けられません。表示したいコンテンツに応じて、必要な視野角のデバイスを検討してください。
選び方 ポイント② デバイス操作機能
ウェアラブルデバイスを用いてそのデバイス自身もしくは連携するデバイスを操作する際には、主に下図の操作方法があります。
タッチパネル、タッチディスプレイ
ウェアラブルデバイスでも、タッチパネルやタッチディスプレイを持つものがあります。タッチ動作はスマートデバイスやパソコンなどでユーザが慣れた方法なので直感的に操作できます。ただし、どちらも手を使うため、両手が使えない状況での利用は困難です。
音声コマンド
作業者の声を認識してデバイスをコントロールする方法です。特定のコマンドを読み上げることでマシン等の操作制御します。
手を使って操作できない環境で効果を発揮しますが、騒音が大きい場所では作業者の声を正しく読み取ることができず精度が低下します。
ジェスチャー
装着者の特定の身体の動きを利用してデバイスをコントロールする方法です。作業者のジェスチャーを認識させる方法としては複数あり、たとえば赤外線カメラやモーションセンサ、加速度センサなどが代表的です。
ジェスチャーに利用する身体の部分としては、指や手、頭などがあります。指の場合は、指で文字やアイコンを描く動作で文字を書いたり操作を行なったりできます。
又、手を使えない環境では加速度センサで頭の動きをセンシングする方法があります。この他にも、特徴的なジェスチャーとして、瞳の瞬きを利用したウインクや、目の向いている方向を検知するアイトラッキングなどがあります。
選び方 ポイント③ センシング
ウェアラブルデバイスにはさまざまな種類のセンサーが搭載されています。
歩数/活動量
ウォッチ型やアクセサリ型のデバイスの多くで搭載おり、作業者の活動量が自動測定できます。ただし、各メーカーの加速度センサの利用の仕方により測定値のばらつきがあります。
位置情報
GPS機能を搭載することにより作業者の位置が把握でき、また歩行履歴を容易に調査することが可能なので動線ルールが即時、分析可能です。
睡眠時間
睡眠時間の測定は着けたままで自動的に判断してくれる製品と手動で睡眠時間計測モードに切り替える製品とがあり、運行管理者がトラック運転者の「睡眠チェック」をする際に有効なツールとなり居眠り運転を防止できます。
心拍数
ウォッチ型のデバイスや胸に装着するタイプのアクセサリ型デバイス、衣服型のデバイスで搭載、腕に装着するタイプでは、主にウォッチなどの盤面の裏から光を照射し反射する血流の流れを見ることで心拍数を計測します。
心電波形
腕に着けるリストバンド型デバイスの一部や胸に貼り付けるタイプのデバイス、衣服型のデバイスで搭載、胸に貼り付けるタイプのデバイスでは電流の流れを良くするためにジェル状のもの、トレーニングシャツなどの衣服型デバイスがあります、常時、通信されているので作業者の体調不調を事前に本人及び管理者に通知してくれますので安全衛生事故防止の為に有効なツールとなります。
脳波
ヘッドバンド、ヘッドセットの形状のデバイスで特別なセンサを用いて脳波を測定可能、最近ではイヤホン型脳波計も開発され、より使いやすいウェアラブルデバイスとしてビジネスで使用されている。
手の動き
手を振る等の動きを取得したい時、リストバンド型、ウォッチ型のデバイスの9軸加速度センサーを用いて動きに関連するデータを測定できます。
手を握る動作、特定の指を曲げる動作などは腕に装着して筋電位測定センサーを用いて取得可能です。
指の動き
指を動かす動作などは、指輪型のデバイスの加速度センサを用いて測定可能
眼の動き
眼球の動きや瞬きなど目の動きを取得したい場合はメガネ型のデバイスの内側に搭載される赤外線センサやアイトラッキングカメラを利用する必要があります。
細かい眼球の動きや見ている方向を取得したい場合は、アイトラッキングカメラが必須となります。
バッテリーの容量、交換
ウェアラブルデバイスを利用する際に必ず検討のポイントとなるのがバッテリの容量、すなわち電池の寿命です。
バッテリの容量とバッテリのサイズは比例関係にあり、長時間利用できるようにするとデバイスのサイズが大きくなってしまいます。
想定しているウェアラブルデバイスの用途はどのようなものか、連続稼働はどの程度必要かを検討してから、デバイスを選択する必要があります。
また、交換可能なバッテリを採用しているモデルもあります。
最近ではウェアラブル端末向けの「フレキシブルリチウムイオン電池」も開発されています。
セパレート(分離)方式
メガネ型のウェアラブルデバイスであるスマートクラスでは、ディスプレイ、カメラが搭載されるメガネ部分とバッテリやタッチパッド、ボタンを搭載した本体とを分離ことで軽量化とバッテリー大容量化の両立を実現する製品もあります。
スマートグラスを利用する場合は、
・メガネ部分を軽量に保ち、長時間装着しても疲れないか
・本体が有線で接続されることで不便さがないか
という観点で検討します。
開発環境
ウェアラブルデバイスを用いてアプリケーションを開発しようとした場合、があるか否かは非常に重要なポイントです。
ウェアラブルデバイスによってはメーカーがSDK (ソフトウェア開発キット)を用意している場合がありますので事前に開発環境がどのくらいかを把握して置く事が必要です。
メンテナンス、耐久性
ウェアラブルデバイスは常時 体に着用する小さなデバイスなので汚れ易く、衝撃が加わり易いので耐久性、信頼性を考慮して商品を選択することが購入する場合のポイントです。
工場でのウェアラブルデバイスの活用
ウェアラブルデバイスは身に着けている人の能力を拡張します。
具体例とし『見ているものをすぐに認識、検索して物体の概要や用途を瞬時に把握、人の記憶力をサポート』します。
更に作業者自身の状態を把握するための感覚器官も拡張できます。たとえば、ウェアラブルデバイスを装着することは、各種センサを身に着けることと同じです。
これによって、装着者の身体情報を逐一取得できます。搭載されたカメラで装着者のまわりの状況を撮影すれば、装着者の視覚を鮮明にかつ永続的に保持することもできます。
会社、工場、研究所でのウェアラブルデバイスの活用
色々機能やセンサを搭載したウェアラブルデバイスは企業、工場での活用も期待されています。特に両手がフリーになるスマートグラスは、両手を使うことができない状況でも、デバイスを操作できます。そのため、そのような状況でも作業に関する情報を得たい製造業や物流業で活用されています。
フロント作業
企業の受付や空港でのチェックイン等対面して接客をする場合にスマートグラスを活用できます。
スマートグラスがあれば来訪者の情報をスマートグラス上のディスプレイで確認可能です。事前にRFIDタグ、ビーコンを使い、登録している来訪者と照らし合わせるという方法で実現できます。スマートグラスを活用する
ことで、人の記憶に頼らずに接客できるため、サービスの品質を一定にすることが可能です。
遠隔からの作議支援
スマートグラスを通じてコミュニケーションをすることで、遠隔から作業を支援できます。現場の作業者にスマートグラスを装着してもらい、作業者の目線や状況を遠隔地にいるベテラン作業者と共有することで、視界を共有しながら作業に関する指示をもらうことができます。
遠隔からベテラン作業者がサポートすることで、今まで一人では対処できなかった作業も現場に駆けつけた作業員のみで対応できるようになります。
作業トレーニング
スマートグラスの前面に付いている目線方向のカメラを利用して、ベテラン作業者の目線映像を記録しておくことで、習熟度の低い作業者のトレーニングに利用できます。
習熟度の低い作業者は、ベテラン作業者の目線動映像をハンズフリーで眼前のディスプレイで確認しつつ、実際に手を動かしながら作業のトレーニングができます。言葉や画像だけでは伝わりにくい作業のポイントについて、目線映像を確認することでより直感的に理解できるようになります。
ハンズフリー作業
機械の修理、メンテナンスを行なう場合、スマートグラスを用いてマニュアルを確認できるようになります。これまでは、マニュアルを閲覧するときは、いったん作業の手を止める必要がありました。スマートグラスを活用することで、作業の手を止めずにハンズフリーで効率良くマニュアルなどを確認できます。
トレーサビリティ確保
機械の組み立て、食品加工の場面において、作業結果の写真を撮影して証跡として保存しておくことがあります。こうすることで、トレーサビリティを確保でき、後から問題が起こった場合でもどこで作業に不備があったか調べることができます。
これまでは、チェックリストを用意して記録者がチェックを付けたり、デジタルカメラで撮影したりすることで作業の証跡を残してきました。これらはスマートグラスのカメラと音声コマンドなどで、作業者単独で実現できます。
自動車のドライブレコーダー的な使い方ができるので問題が発生した時に正確に過去のエビデンスを確認することができます。
ピッキング補助
物流業や製造業では、倉庫内で配送物や機械の部品を指定の場所に集めるピッキング作業がつきものです。どこで、なにを、いくつ、どこに運ぶのかというピッキング作業に必要な情報は、ハンディターミナルを使ってバーコードなどから読み込み、ディスプレイに表示して確認するという作業が必要です。
現在はピッキング業務を専用のデバイスで行なっていますが、今後はスマートグラスのカメラを使った画像認識やバーコードから必要な情報を読み取り、眼前のディスプレイ上で配送先や個数などを管理することも考えられます。
歩数管理
下図はある倉庫での作業時間および処理量、歩数情報を基に作成したものです。同一環境下で計測した場合、作業生産性が高いスタッフは1分あたりの歩数が多く(活動している)、1処理あたりの歩数が少ない(無駄な動きがない)傾向があります、つまり、高生産性ゾーンから外れている作業スタッフは、例えば「ピッキング作業でモノを探している時間が長い」「必要以上に動線が長く作業が遅れている」可能性があります。
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参考文献:
絵で見てわかるIoT/センサの仕組みと活用 株式会社NTTデータ (著)
図解入門 よくわかる最新センサ技術の基本と仕組み
デバイスごとにわかるIoTスターターのための電子工作チャレンジブック
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