問題解決基本手順
問題解決の基本手順は、どんな分野でも応用できる「論理的に問題を把握し、解決策を見つける」ためのプロセスです。以下が一般的な基本手順です
問題の明確化(問題の特定)
何が問題なのかをはっきりさせる。
現状と理想のギャップを明確にする。
「本当の問題(真因)」を見つけることが大事。
情報収集と現状分析
関連する情報やデータを集める。
問題の背景や原因を分析する(例:5Why分析、因果関係図など)。
原因の特定
問題の「表面的な原因」ではなく、「根本的な原因(Root Cause)」を突き止める。
解決策の立案
原因に対して有効な対策を複数考える。
費用、実行可能性、効果などを比較検討。
解決策の実行
最適な解決策を選び、実行に移す。
誰がいつ何をするかを明確に。
効果の検証(評価)
実行後に問題が解決されたかを確認する。
必要であれば改善策を再検討。
再発防止策の策定
同じ問題が再び起きないように対策を仕組み化。
問題認識(現状把握)
「問題認識(現状把握)」とは、問題解決の最初のステップであり、「いま、何が起きているのか?」を正確に理解することです。ここがブレると、その後の分析や解決策も的外れになってしまうので、非常に重要なフェーズです。
現状の事実を集める
客観的なデータや情報を集める(数値、報告書、現場の声など)。
感情や主観ではなく、「何が起きているか」を明らかにする。
あるべき姿(理想)と比較する
「本来どうあるべきか」「目標は何か」と現状を比べることで、ギャップ=問題が見えてくる。
問題かどうかを見極める
単なる一時的な不具合なのか、構造的な問題なのかを判断する。
問題が明確でなければ、「どこが不安定なのか」「何に困っているのか」から洗い出す。
よく使われる現状把握の方法
5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって)
定量データの分析(グラフ・表などで見える化)
ヒアリング・観察(現場の声や行動を直接確認)
フローチャート・業務プロセス図(流れのどこに問題があるか特定)
**KPT法(Keep / Problem / Try)**など
背景認識の目的:
①目標値および設定条件の理由
②真の目的、狙い。 問題とは「理想と
③整理、分析する方向付け(角度)が明確。
③整理、分析する上での制約が明確。
④問題解決の為の二律背反条件が明確化。
レベル(視点)を変えて問題認識: 業界
①立場(視点)を変えて問題点を認識: 会社
②立場(視点)を変えて制約を認識
③立場(視点)を変えてトレードオフを認識 自署部
④互いの立場に立って問題点を認識 自分 利益率
問題を立体化し認識:
売上高 キャッシュフォロー
目標設定
「目標設定」は、問題解決や成長・改善に向かって進むための“ゴールを明確にする”ステップです。
目標設定とは?
**目標設定(Goal Setting)**とは、
「自分たちが最終的にどうなりたいのか(達成したい姿)」を明確にすること。
目標設定の目的
解決に向かう方向性を明らかにする
チームや個人が同じゴールに向かって動けるようにする
進捗や成果を評価しやすくする
モチベーションの源になる
良い目標設定のポイント:SMARTの法則
「いい目標」は以下の5つの要素を満たすとよいとされています。
項目 | 内容 |
---|---|
S(Specific) | 具体的である |
M(Measurable) | 測定可能である(数字があると◎) |
A(Achievable) | 達成可能である |
R(Relevant) | 目的に合っている |
T(Time-bound) | 期限が設定されている |
🔸例(悪い例 → 良い例)
× 売上を伸ばす
→ 〇 来月末までに売上を10%増加させる
問題解決における目標設定の役割
問題を見つけたら、それに対して
「どうなれば“解決”したと言えるのか?」=目標の姿を設定します。
たとえば:
【問題】:製品の不良率が高い
【目標】:不良率を現状の5%から3%以下に下げる(3ヶ月以内に)
バランス・スコアカード
目標設定と**バランス・スコアカード(BSC:Balanced Scorecard)**は、組織やチームの戦略を「具体的な行動・成果」に落とし込むときにとても相性が良いです。
そもそもバランス・スコアカードとは?
バランス・スコアカード(BSC)は、企業や組織の戦略的な目標達成をバランスよく管理するフレームワークです。
🔹ポイントは、「財務指標だけに頼らず、4つの視点からバランスよく目標を設定・評価する」こと。
BSCの4つの視点と目標例
視点 | 目的 | 例 |
---|---|---|
財務の視点 | 収益性やコストの改善 | 売上10%アップ、利益率5%以上 |
顧客の視点 | 顧客満足・市場での競争力 | 顧客満足度90%以上、解約率の低下 |
業務プロセスの視点 | 内部の効率・品質の向上 | 生産リードタイム短縮、ミス件数削減 |
学習と成長の視点 | 組織の能力向上 | 社員教育実施率100%、人材定着率の向上 |
目標設定とBSCの関係
BSCを使うことで、戦略が「具体的な目標」として見える化される
目標が4つの視点でバランスよく配置されることで、偏りなく全体最適ができる
個人や部門レベルまで目標を分解(連動)できる → 戦略と日々の行動がリンク
例:カフェチェーンのBSC的目標設定
視点 | 戦略目標 | SMARTな目標設定例 |
---|---|---|
財務 | 利益の最大化 | 今期の営業利益を前年比+15%に |
顧客 | リピート率向上 | 月間リピート客率を50%以上に |
業務 | 注文処理の効率化 | 平均提供時間を5分以内に短縮 |
学習 | 店員スキルの向上 | 接客研修の参加率100%達成 |
まとめ:目標設定+BSCのメリット
戦略が実行可能なアクションに変わる
組織全体で“同じ方向”に向かって動ける
効果測定(評価)がしやすくなる
原因分析
「原因分析」は、問題解決プロセスの中でも超重要なステップです。なぜなら、「正しい原因」がわからないと、どんなに努力しても解決できないからです。
**原因分析(Root Cause Analysis)**とは、
「問題がなぜ起きているのか?」を深く掘り下げて、**根本的な原因(真因)**を見つけ出す作業のことです。
原因分析の目的
問題の表面的な症状ではなく、**本質的な原因(根っこ)**を突き止める
的確な対策につなげる
再発を防ぐ
主な原因分析の手法
手法 | 概要 | 特徴・使い方 |
---|---|---|
5Why分析 | 「なぜ?」を5回繰り返す | シンプル・個人やチームで使いやすい |
特性要因図(フィッシュボーン、因果関係図) | 原因を「人・モノ・方法・環境」などで分類して整理 | 複雑な問題向け、チームで視覚的に整理できる |
パレート分析 | 問題の発生頻度を数値で可視化(80:20の法則) | 複数原因があるときに優先順位を決める |
フローチャート分析 | プロセスの流れを図で表す | どこで問題が起きているか見つけやすい |
例:5Why分析の使い方(製品に不具合が発生した)
なぜ 製品に不具合があったのか?
→ 組み立てミスがあったからなぜ 組み立てミスが起きたのか?
→ 作業マニュアルが守られていなかったからなぜ 守られていなかったのか?
→ マニュアルが分かりづらかったからなぜ 分かりづらかったのか?
→ 作業手順が最新に更新されていなかったからなぜ 更新されていなかったのか?
→ マニュアル管理の責任者がいなかったから
この場合の根本原因は「マニュアルの管理体制の欠如」
原因分析でありがちなミス
思い込みや決めつけで「犯人探し」になる
表面的な原因で止まってしまう
データや事実を確認せずに進める
ポイントは「構造的に、客観的に」分析すること!
「フィッシュボーン図(特性要因図)」を使用すれば視覚的に判断できます。
下記が参考にあるサイトです。

原因分析の方法
思いつきで実施した対策では有効である対策を打つことができず。但し、現場で発生してる 問題の90%前後は以前、発生した問題と類似しており、高度な経験を持つ熟練多能工に場合は分析を省略して即、対策を採用して効果を確認したほうが合理的 である。
現実の現場は秒単位で品質状況が変化しており、原因分析に数日をかけている間に新たな 原因の問題の影響で分析結果が的を外れてしまう場合がある。
現場にて現物を確認 過去のトラブル事例
原因要素の抽出
「原因要素の抽出」は、原因分析の中核となる作業です。
問題の背後にある「さまざまな要素(=原因のかけら)」を見つけ出すステップです。
原因要素の抽出とは?
原因要素の抽出とは、
「なぜこの問題が起きたのか?」を考え、問題に関係する具体的な原因の要素を洗い出すことです。
これは表面的な「~が悪かった」だけではなく、構造的・複合的な原因を広く拾い上げることが大切です。
原因要素の抽出の目的
問題に影響しているすべての要素をもれなく出す
根本原因(真因)につながるヒントを見つける
効果的な対策を立てるためのベースをつくる
よく使われる手法
ブレインストーミング
関係者と自由に「思いつく原因」をどんどん出していく
判断せずにまずは量を出す
フィッシュボーン図(特性要因図)
原因を「人・モノ・方法・環境」などのカテゴリで分類
整理された形で見える化できる
5W1Hを使って洗い出す
問題について「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうやって」を問い直す
🔍 例:飲食店で「料理提供が遅い」という問題の場合
抽出される原因要素:
注文ミスが多い(人)
キッチンの人手不足(人)
調理工程が多い(方法)
調理器具の配置が悪い(環境)
注文システムが分かりづらい(方法)
材料が切れていることがある(材料)
混雑時の動線が悪い(環境)
👉 このように、表面的には「遅い」だけでも、背後に複数の要素が潜んでいます。
抽出のポイント
「人・モノ・方法・環境・測定・材料」などで観点を変える
「~だから遅れるのでは?」「~が足りないのでは?」と疑問を投げかける
現場の事実・データに基づいて考える
原因・影響度の把握
「原因・影響度の把握」は、抽出した原因の中で“どれが重要か”を見極めるフェーズです。
たくさんの原因が出てきたときに、優先順位をつける判断基準として欠かせません。
問題の原因をいくつも抽出したあとに、それぞれの
深刻度(影響がどれくらい大きいか)
頻度(どれくらいよく起こるか)
制御可能性(自分たちで対応できるか)
といった観点から、「本当に取り組むべき原因」を絞り込む作業です。
主な分析の方法・手法
パレート図(Pareto Chart)
原因別に発生件数や影響金額などを並べて、重要な少数(20%)を特定する
例:全体の80%の問題は、20%の原因から発生している(80:20の法則)
マトリクス分析(影響度 × 発生頻度)
横軸:発生頻度(低〜高)
縦軸:影響度(小〜大)
→ 右上(頻度高 × 影響大)の項目から優先して対策する
評価スコア方式
各要因に対して、「影響度・頻度・対処可能性」などにスコア(1〜5)をつけて合計点で優先順位づけ
出荷ミスの原因と影響度の評価
原因 | 頻度(1〜5) | 影響度(1〜5) | 合計スコア |
---|---|---|---|
ラベル貼り間違い | 5 | 5 | 10 |
梱包手順の確認不足 | 3 | 4 | 7 |
商品の類似性が高すぎる | 4 | 3 | 7 |
検品時の作業ミス | 2 | 5 | 7 |
倉庫照明の暗さ | 3 | 2 | 5 |
→ スコアが高い要因(10点など)から優先対策へ!
対策の具体化
原因に対して、「どうやって解決するのか?」という現実的な行動案・改善案を明確にするステップです。
単なるアイデアではなく、誰が・いつ・何をするのかまで具体化することがポイント。
ステップ | 内容 |
---|---|
① 対策案を洗い出す | 原因ごとに、可能な解決方法を複数考える(ブレストも有効) |
② 実行可能性を評価 | 実行しやすさ・効果・コストなどを評価 |
③ 優先順位をつける | 重要な対策から着手できるよう整理する |
④ 具体化する(行動計画に落とす) | 「誰が・いつまでに・何を・どうやってやるか」を明記 |
⑤ 実行準備を整える | 必要なリソースや承認などを整える |
対策具体化のテンプレート例
原因(特定済み) | 対策内容 | 実行者 | 期限 | 評価方法 |
---|---|---|---|---|
作業マニュアルが古い | マニュアルの更新&再配布 | Aさん | 4月15日 | 作業者理解度テスト |
チェックリストが無い | チェックリストを新規作成・運用 | Bさん | 4月10日 | ミスの件数比較 |
ラベル貼り間違い | ダブルチェック体制を導入 | Cさん | 4月20日 | ヒューマンエラー減 |
新人教育が不足している | OJTトレーニング計画を整備 | Dさん | 4月末 | 評価シートで確認 |
対策を具体化するときのコツ
「やるべきこと」ではなく「やれること」にする
抽象的な表現(例:「注意する」)は避ける
→ 「〇〇を使って確認する」「1日1回〇〇を記録する」などできれば効果検証方法もセットで決めておくと◎
例:悪い vs 良い対策表現
✖ 抽象的な対策 | 〇 具体的な対策 |
---|---|
ミスを減らす | 毎日17時にダブルチェックを行う |
教育を強化する | 週1回30分の新人OJTを実施する |
注意を徹底する | 誤出荷報告が出たら即日ミーティング |
対策計画表
対策計画表は、原因分析のあとに立てた対策を「きちんと実行に移す」ための行動スケジュール+管理ツールです。
🗂 対策計画表とは?
対策計画表とは:
「いつ・誰が・何を・どのように」対策を実行するのかを、明確に記録する表
問題解決を実行レベルに落とし込み、チームで共有・進捗管理するのに役立ちます。
対策計画表の目的
対策を行動ベースで具体化する
役割と期限を明確にして、実行力を高める
実施後に**振り返り(効果検証)**ができるようにする
対策計画表の基本フォーマット(例)
No. | 原因 | 対策内容 | 担当者 | 期限 | 実行状況 | 効果確認方法 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 作業手順が不明確 | 手順書の更新&再配布 | Aさん | 4月10日 | 実施中 | 作業精度チェック |
2 | ミスの確認不足 | チェックリスト導入 | Bさん | 4月15日 | 未着手 | ミス発生数の変化 |
3 | 新人教育不足 | 研修マニュアル作成と研修実施 | Cさん | 4月20日 | 完了 | 理解度テストの結果 |
活用のポイント
対策ごとに**「担当者」と「期限」**を明確に(曖昧だと実行されない)
状況欄や備考欄で進捗を可視化
効果確認方法を入れておくと、振り返り・再評価がスムーズ
応用:ExcelやGoogleスプレッドシートで管理すると便利!
フィルター機能で進捗別に表示
カラー管理で優先度や完了状況を一目でわかるように
特徴 | 内容 |
---|---|
対策の「実行計画書」 | アイデア → 行動に変える |
実行責任を明確にする | 担当・期限がカギ |
チームで共有可能 | プロジェクト管理にも使える |
評価
問題解決のプロセスでの**「評価」**は、すべての対策が終わったあとに「ちゃんと効果が出たのか?」を確認する重要なステップです。
評価とは?
**評価(Evaluation)**とは:
対策の結果として「問題がどれだけ改善されたか」を、データや基準を使って判断すること。
言い換えれば、
「対策の効果はあったのか?」
「問題は再発していないか?」
を確認するプロセスです。
評価の主な目的
目的 | 内容 |
---|---|
✔ 効果測定 | 対策によって、問題が改善されたかどうかを数値で確認 |
✔ 成功・失敗の振り返り | どの対策が効いたのか、何が足りなかったのかを整理 |
✔ 再発防止につなげる | 改善が一時的で終わらないように、恒久対策へ |
評価の観点(よく使われる3つ)
観点 | 質問例 |
---|---|
効果 | 問題はどのくらい改善されたか?(数値・事実で) |
効率 | 無理なく実行できたか?時間やコストは? |
継続性 | 一時的な改善で終わっていないか?仕組みになっているか? |
評価の具体的な方法
方法 | 内容 |
---|---|
KPIとの比較 | 対策前と後で、目標値に対してどうだったかを比較(例:ミス件数、売上など) |
アンケートやフィードバック | ユーザーや現場の声を聞いて変化を確認 |
グラフ・表での見える化 | 数値の変化をビジュアルで確認すると分かりやすい |
現場観察・ヒアリング | 実際に行動が変わっているかを直接確認する |
評価例(出荷ミスの対策)
項目 | Before | After | 評価結果 |
---|---|---|---|
出荷ミス件数(月間) | 12件 | 3件 | 効果あり(75%減少) |
作業者の満足度 | 普通〜不満 | 満足 | 手順が分かりやすくなった |
チェックリスト活用率 | なし | 90%活用 | 対策が現場に浸透中 |
ポイント
「なんとなく良くなった」ではなく、明確な事実・データで評価する
評価をもとに、次の改善や標準化につなげる
標準化
水平展開
**水平展開(Horizontal Deployment)**とは:
ある部門やチームでうまくいった改善や成功事例を、
他の部門・他の業務・他の拠点にも広く適用していくことです。
つまり、
「良いやり方を他でもマネして活かす」=ノウハウの横展開
水平展開の目的
目的 | 内容 |
---|---|
効果を最大化 | 成功した改善を他でも活かすことで、全体の品質や効率がUP |
同じ失敗を防ぐ | 他部門が同じミスを繰り返さないようにする |
組織の学習力強化 | チームや部門の知見を組織全体の力に変える |
属人化の回避 | 一部の人や部署に依存せず、組織で成功を共有できるようにする |
水平展開の具体的なやり方
ステップ | 内容 |
---|---|
① 成功事例を整理 | 効果があった対策・方法を記録、まとめる |
② 関係者へ共有 | 他部門・他拠点と情報共有(例:会議・報告書・イントラ) |
③ 適用可能性を確認 | 他部署でも使えるかどうか、条件や環境の違いを確認 |
④ 適用・導入 | 手順書やツールを流用し、他でも使える形にして導入 |
⑤ 効果をモニタリング | 展開後も効果をチェック&フォローする |
例:水平展開の具体シーン
成功例 | 展開対象 | 展開方法 |
---|---|---|
A工場でのミス削減策 | 他の製造ライン・工場 | 同じチェックシートを導入し、教育も共有 |
営業部での業務効率化ツール | 他の支店の営業チーム | テンプレートを共有し、使い方マニュアルも配布 |
保育園での保護者対応マニュアル改善 | 他の園や系列施設 | 定例会議で共有、全施設で運用開始 |
水平展開とPDCAのつながり
対策の効果を確認し(Check)
他でも活かす(Act)
それが次のP(Plan)につながる!
問題解決終了後の整理、分析
スライドシェアー 無料ダウンロード資料
問題解決手法のスライドシェアー 無料ダウンロード
参考文献:問題を整理し分析する技術 (株) 日本能率協会コンサルティング