マテハン分析の基礎
物流センター、工場倉庫でのマテリアルハンドリングの分析、改善方法を解説、物流改善の基本については下記の記事が参考になります。
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マテリアル・ハンドリングとは
マテリアル・ハンドリング(Material Handling、MHまたはマテ・ハン)とは、商品を仮置(停滞)している状態から移動することを言い、自社内での荷降ろし・積替え・集荷・移動・積込み・出荷作業などの一貫した品物の取扱いをマテ・ハンと言う。
このマテ・ハンに要する費用はどの企業でも高額であり、とくに鉄鋼業など
においてはコスト削減の最大の対象であった。その後もあらゆる分野で小ロット化、タイムリー化か客先二-ズとしてクローズアップされる中、コスト増の最大の問題となり続けている。
生産工場でのマテ・ハンを次の図表のように分類される。
①工場・資材倉庫での貯蔵段階マテ・ハン
②工程間運搬作業でのマテ・ハン
③配送センターでのマテ・ハン
マテハンの分類
①工場・資材倉庫での貯蔵段階マテ・ハン
貯蔵段階としては、資材・部品などの補給機能がある。一般的に倉庫は主要
機能でないために工場の遠い位置に設置されるケースが多く、その分運搬距離
も長くなる。そこで、できる限り外部から搬入時、工程前直入を図り、ハンド
リング回数の削減のための生産管理改善が必要である。
②工程間運搬作業でのマテ・ハン
エ程間作業には必ずマテ・ハンが付きまとう。たとえば加工・組立・梱包前
後の移動・準備・位置決めなどがある。ここでは工程後の仮置き・運搬などを
なくし、できる限り加工→即梱包、組立→検査→梱包と連続して作業可能にレ
イアウトを計画すべきである。
③配送センターでのマテ・ハン
配送センター、製品倉庫でのマテ・ハンのために多くの作業者を必要として
いるところも多い。問題は在庫が多いために置場不足と配置換え、ハネ出し作
業増がある。そこで出荷情報の精度向上と、積込時間の短縮などでの効率アッ
プが望まれる。
マテハンの流れを記号で表現したモノが下記の図である。
マテリアル・ハンドリング分析の種類
マテハンの運搬分析はその対象とするものによって幾つかの種類に分けられるが主な分析手法は次のとおりである。
(a)運搬工程分析
これは,観測対象となる品物が流れていく状況を順を追って調べ,その取り扱われ方や置かれ方を「運搬工程記号」を用いて記録し,分析・検討する方法である。これには,「直線式運搬工程分析」と「配置図式運搬工程分析」がある。
(b)運搬活性分析
これは,「活性」(置かれた品物の移動のしやすさ)の維持という観点から品物の置き方や荷姿について分析・検討する方法である。
(c)カラ運搬分析
品物の移動をともなわずに,運搬設備・器具のみの移動のために行われる運
搬を「カラ運搬」という。「カラ運搬分析」では,運搬の状態を分析・検討して
カラ運搬を減少させることをねらいとしている。
運搬工程分析とは?
品物の流れのなかで,特に「品物の動き」に主眼をおいて行う分析手法である。この分析のやり方は,基本的には工程分析と同じであるが使用する分析記号が若干異なる。すなわち,運搬工程分析には,次のような記号が使われる。
① 基 本 記 号
品物の扱われ方による作業の区分を示すもので,工程分析と異なる点は運搬が移動と取扱いに分かれる点である(下表)。
② 台 記 号
品物の置かれた状態を示し,運び出しやすさを区分するものである。基本記号に付記して用いる。この記号によって,運搬のしやすさを把握することができる(下表)
③ 動力記号
品物の移動、加工する為の動力が何であるかの区分と人手の要不要を記載。
④ 移動線
分析記号をつないで品物、人、運搬器具の動きを示すもの。
運搬工程分析の分類
運搬工程分析には下記の2つがあり、目的によって使い分ける。
① 直線式 運搬工程分析
品物の流れる工程を分析記号で表してこれらの記号を移動線で結び、必要に応じて左側に「所要時間」「距離」右側に「作業者」「場所」「運搬具」「重量」などを記入し、これらを分析して改善案を提起する。
この方法は運搬の状況を定量的に記録することによって問題点を明確にできる。
② 配置式 運搬工程分析
実際の現場配置を調査し、直線式運搬工程分析の情報を基に運搬経路を線で結んで
記入、この方法は「運搬の流れ」「運搬距離」が目で見て分かるのでレイアウトの
欠点が一目でわかるので運搬改善を検討するのに効果的である。
運搬工程分析の進め方
〔ステップ1〕目的,対象をきめる。
① 現状の問題点を明確にしたうえで,たとえば,運搬距離の短縮,運搬回数の削減,作業場のレイアウト改善などの目的を具体的にきめる。
② 目的に応じて,分析対象となる工程や工程の範囲をきめる。
③ 対象となる製品(特に,運搬上問題のある製品)をきめる。
〔ステップ2〕時期,方法をきめる。
① 観測準備の都合や対象部門の協力などから,分析の開始から終了までの
期間を明確にする。
② どんな方法で,だれが実施するのか,を明確にする。
③ 分析を能率的に行うために,必要な分析用具や資料を準備する。
・分析用具:用紙,筆記具,ストップ・ウオッチ,巻尺など
・資料:配置図,工程分析図表,そのほか分析に必要な資料。
〔ステップ3〕運搬工程分析図(直線式工程分析図)にまとめる。
①用紙に次の事項を記入。
・対象となるライン,工程名,製品名
・調査・分析の期間,作成年月日
・分析者の所属,氏名
・そのほか特記すべき事項
② 運搬工程を,製品の流れを中心に運搬工程分析記号を使って記入する。
観察だけでは不明な点については,聞き込みで確認する。
③ 各工程の内容を調査し,所定欄に記入する。記入事項として
・移動距離,時間
・運搬物の重量,運搬具の名称
などがある。
〔ステップ4〕総括表にまとめる。
直線式運搬工程分析図に基づいて,「総括表」を作成する。この表の集計値
を分析して問題点を把握する。
〔ステップ5〕配置図式 運搬工程分析図を作成する。
① 対象職場のレイアウト図を作成する。
② 運搬経路に沿って,各工程の場所に運搬工程分析記号を記入し,これら
の記号を線で結ぶ。
運搬活性分析とは?
活性示数の意味
運搬は移動距離だけが問題ではなく,運搬の前後における「取扱い」すなわち,積み込み,積みおろし作業に,より多くの時間と労力が費やされているのが実態である。
したがって,品物の置き方は,次に移動するのに手間がかからないことが大切である。置かれた品物の「移動のしやすさ」を「活性」と呼ぶ。活性を5段階に分けて,「活性示数」を使って運搬状況を分析するのが「運搬活性分析」であり(下表)、活性示数が大きいほどよいことを意味する。
運搬活性分析図の作成
運搬活性分析を行うには,「運搬活性分析図」を作成すると,現状を把握しやすい。以下,運搬活性分析図の作成手順について述べる。
〔ステップ1〕横軸に工程(ステップ)を,縱軸に活性示数をとる。
〔ステップ2〕横軸の各ステップ目盛の上方に,性示数表に基づいて,各工程の説明を記入する。ただし,記入対象となる工程は「移動」「取扱い」のみとする。工程の説明を記入するとき,運搬工程分析図に基づいて行うと便利である。
〔ステップ3〕縦軸の目盛に沿って,各工程ごとの活性示数を●印で記入する。
次にそれらの点を直線で結ぶと,次図のような「運搬活性分析図」ができあがる。この図を見ると,工程ごとの活性の変化が一目でわかる。
〔ステップ4〕運搬活性分析図に基づいて工程全体の「平均活性示数」を次式により算出する。
平均活性示数=(停滞状態にある活性示数合計 )/停滞状態の数
〔ステップ4〕
下図 例では
平均活性示数= (0+3 + 4十0+ 3+4+3+4+2 + 4)÷10=2.7
となる。この示数の値が小さいほど品物の置き方が悪く,移動のために多くの手間を要する。
このように,平均活性示数を算出すれば,品物の置き方の良し悪しを比較することができる。要は活性示数を高めることである。
そのためには,コンテナやパレットなどを積極的に利用し,また,人力による運搬をできるだけ機械力に変えることが望ましい。
カラ運搬分析とは?
「カラ運搬」とは文字通り,原材料・部品などを積み込まないで,空の状態で移動することである。多くの工場において,原材料・部品,製品の運搬にはそのものの移動の2倍以上の距離の歩行,運搬車の移動が行われている、カラ運搬は,まったくムダでしかない。
工場内での運搬を考える場合,従来は,品物を工程のすすむ方向に移動させることのみを重視して,そのために必要な人や運搬車の移動をあまり考えていない。
しかし,品物の移動だけにとらわれずに,人や車の動きを調査してみると運搬改善に結びついてくる。その改善の手がかりとして「カラ運搬係数」を求める。
カラ運搬係数=
((人の移動距離)ー(品物の移動距離))/品物の移動距離
=(カラ移動距離 )/品物の移動距離
マテハン改善案の検討
マテハン改善の検討
マテハン分析によって実態が把握できると,以下に示すような着眼点に基づいて,問題点を把握し,改善案を提起する。
(1)運搬工程分析図表の改善着眼点
① 台記号を調べて活性の低いものは,高める方法を考える。
② 停滞が多くないか。できるだけ停滞をなくせないか。
③ 停滞の前後の取扱いをなくせないか。
④ カラ運搬をできるだけ減らせないか。
⑤ 人力運搬をできるだけ機械力,重力利用に変えられないか。
⑥ 運搬距離を短縮する方法はないか。
⑦ 移動線の逆行や屈曲はないか。それを減らすためにレイアウトを変えられないか。
(2)運搬活性分析の改善着眼点
① ユニット化を図る
容器に入れた状態で運べるようにして,活性示数を0から1にあげる(コンテナ,運搬箱,袋など)。
② パレット化を図る
フォークリフトで運搬できる荷姿にして,活性示数2の状態にする(パレッド,スキッドなど)。
③ 車両化を図る
車両にのせた状態で置き,すぐ運搬できるようにして,活性示数を3に上げる(手押し車,台車,置台兼用の運搬車など)。
④ コンベアの利用
コンベアにのせて自動的に運べるようにすれば,活性示数4の状態になる(ベルト・コンベア,スラット・コンベアなど)。
活性の改善をすすめるにあたって,当然個々に活性示数が大きい状態ほどよいが,同時に一連の工程の流れをたどってみて,工程全体の活性示数(平均活性示数)が大きくなるようにすることが必要である。
よくみられる事例として,コンベアとコンベアの継ぎ目で手運搬が行われていて,そこが工程の流れのネックになっていることがある。運搬改善で見落としてはならない点は,アンバランスな継ぎ目運搬を改善することによって,全体の生産性を高めることである。
平均活性示数による改善着眼点
① 0.5未満:コンテナ,パレット,手押し車の活用をすすめる。
② 0.5~1.3未満:動力運搬車,フォークリフトの活用を考える。
③ 1.3~2.3未満:コンベア,トレーラ列車方式の活用を考える。
④ 2.3以上:コンベアやフォークリフトの活用をすすめ,運搬工数の節減を
図る。
*トレーラ列車方式:
あらかじめ作業場所の傍にトレーラ(被けん引車)を置き,できたものを直接トレ一ラにのせ,積み終ったトレーラを出しておく。これをトラクタ(けん引車)が引いていって,所定の場所にトレーラごと切り離して置いていく方式。この方式では,移動の前後の再取扱いがなくなりトラクタ、運転手の有効稼働が向上する。「TTT方式」ともいわれる。
運搬の基本原則によるマテハン改善
① 品物の活性についての原則
・活性荷物の原則:品物を動かしやすい状態に保つこと。活性示数を維持し,向上すること。
・単位荷物方式(ユニット・ロードの原則):荷物をまとめた形で取扱うこと。荷姿を統一し,運搬具や運搬方式を標準化すること。
・パレット化の原則:品物をパレットにのせて,取扱いやすくすること。
・再取扱いの原則:積み替えなどの再荷役作業をやめること。
・トレーラ列車方式:トレーラを有効に活用し,再取扱い,横持ちをなくすこと。
② 機械化・自動化についての原則
・重力化の原則:重力を活用して人の手間を省くこと(重カローラ・コンベア,シュータの利用)。
・機械化・自動化の原則:品物の移動,取扱いを機械化・自動化すること。
・継ぎ目の原則:移動と移動の継ぎ目に起こる取扱いの手間を省くこと。
③「手待ち」と「カラ運搬」についての原則
・チームワークの原則:共同作業を行うとき,仕事の関係で相互に手待ちを生じないようにすること。
・定時運搬方式:運行時刻を組んで,定時に運搬車が巡回して集配する方式。カラ運搬や手待ちが減り,運搬車と人員のムダが省ける。
・稼働率の向上:運搬設備の稼働率を上げること。
④ 能力向上,作業改善についての原則
・融通性の原則:運搬設備は融通性と弾力性のあるものを選ぶこと。
・スピードの原則:取扱い回数の減少,取扱い時間の短縮,移動速度の増
加で総合的に運搬のスピードアップを図ること。
・スペース活用の原則:バラ置き,しか置きを除去し,パレットにのせて
積み上げるなど,床面積を活用すること。
・自重軽減の原則:運搬具の自重を減らすことにより,運搬効率を上げる
こと。
・標準化の原則:運搬機器のタイプ,大きさおよび方法を標準化すること。
⑤ 移動経路についての原則
・配置の原則:運搬と配置の関係を重視し,配置の合理化・適正化を図る
ごと。カラ運搬の減少,運搬経路の単純化,距離・回数の減少を考える。
・流れの原則,直線化の原則:運搬経路は逆行や屈曲をさけ,なるべく直
線にすること。
MHの改善をすすめるにあたって留意すべきことは,1工程あるいは1部門のみの最適化にとらわれることなく,生産活動全体からみて最適なMHシステムを構築しなければならない。そのためには,MHの改善を行うにあたって経営上の問題が何であり,どこまで改善すべきかという目標を明確に設定してから取組む。
マテハン 改善事例
事例①運搬距離を改善
・部品置き場の位置を組立台(コンベアー)に近づけ、交差を無くした。
・電源工事を行いエージング位置を組立台(コンベアー)に配置。
事例②物流の整流化
・物流の整流化を行い、各工程を加工順に並べて停滞・追い越し・逆流を排除。
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参考文献:
実践IEの進め方 著者:香川博昭
IE 七つ道具 著者:実践経営研究会
よくわかるIE 七つ道具 著者: 藤井春雄
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コメント
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